あある先生のジャパンブックの始まり

私と日本語教育
日本語教師になるという夢を抱え18歳で来豪、22歳の時オーストラリアで幼稚園の教員となり、教育者としての第一歩を歩み始めました。その後、日本語教師となり、保育園・幼稚園・小学校・中学校・高校・会社などで日本語教育に携わって来ました。
現在はバイリンガル教育を行っているオーストラリアのウエラーズヒル小学校で、担任として子どもと共に日本語で授業に取り組んでいます。更に、クイーンズランド大学付属の語学学校Institute of Modem Languageで、年間コース・短期集中コース・高校生向けの夏期講習など、様々なコースを教えるのはもちろんのこと、その他、プログラムやリソース作りにも携わっています。特に2015年には私と他一名の教師との合作で、シドニーとメルボルンのオーストラリア国防軍(Australia Defense Force)のために仕上げた一年間の日本語コースが、最終選抜で選ばれ採用されたのは、日本語教師として大変うれしい経験でした。私は精一杯、日本語教育に生涯を賭けるつもりで今日に至っております。         Mariko's photo beach

日本語の本は難しすぎる!
日本語を外国語または第二ヶ国語として学んでいる学習者が、一人で読解し楽しみながら読める本を、教師としても母親としても、今までにあまり見かけたことがありません。もちろん日本で出版されている本の中には良い本がたくさんあります。しかし、私の生徒や保護者、また他の教師から、「日本語の本は読めない」「難しすぎる」「私の生徒は最後まで読もうとしない」というコメントを、長年にわたり何度も耳にしてきました。

子どもの本は読解が難しい!
「子どもの本は簡単ですか?」とよく質問されます。確かにそう思いがちですが、実はそうではありません。日本語の本、とくに子どもの本こそ、日本語の学習者にとっては難しい要素が多いのです。
主な理由は、日本語の単語や動詞は、同じことを表現するにしても、登場人物の関係、つまり年齢・性別・場所・社会的地位、その他の状況などによって変化するからです。子ども同士・子どもと大人・家族や友人・年上年下・公共の場、あるいは動物との会話などでは、使用される言葉が多様に変化します。例を挙げると、英語の「I」(私)を意味する日本語は数多くあります。「わたくし・わたし・あたし・ぼく・おれ・わがはい・じぶん」など、また地方によっても多くの表現の仕方があります。
また、子どもの本には会話文が多いので、なれない学習者には理解しにくい面があります。英語の「Shall we eat?」は標準語では「食べましょうか」ですが、「食べようか・頂きましょうか・頂こうか・ごちそうになりましょうか」等々、様々な表現があります。その上、昔話などは方言や古い言葉が使用されています。このように様々に変化する言葉が使用されている子ども向けの本の内容を理解することは、日本語学習者には難問です。

書体が読みにくい
日本で出版された子どもの本の書体は、コミカルなものからデザインされているものまで様々です。日本で生まれ育った子どもたちは、小さいころからいろいろな書体に触れていますから、あまり抵抗がありません。しかし、日本語学習関係の本は、世界共通な教科書体やそれに近い書体が使われています。ですから、学習者が様々な書体の本を問題なく読めるわけではありません。書体が「読みにくい」本では読書の楽しさを味わうどころか、読むことの難しさを感じてしまうことでしょう。

日本語の学習者が楽しんで読める本を創りたい!
日本語学習者のための適切な本があまりないという現状と、もともと話を創ったり書いたりすることが好きであるということが、日本語学習者のために自分で本を創ってみようと思ったきっかけです。私は子どもの頃から読むことや書くことが好きでした。学校の作文コンクールで、毎年賞を取っていた記憶もあります。また、両親が教育者という家庭で育った影響もあり、読書の楽しみを幼い頃から味わって来ました。
本を創るにあたり、『あある先生のジャパンブック』を読むことで、日本語学習者が日本語で読むことの楽しさを味わい、それが自信につながり、「日本語の本を読むのが楽しくなった!」「もっと読みたい」と思えるようになるための一助になることが私の願いであり、楽しみでもあるのです。日本で出版されている本をいつか読めるように、私の書いた本が、その架け橋になれたら幸いです。

私の母と読書教育
最後に写真を提供してくれる私の母、田代美津子について言及しておきたいと思います。母は30年以上教師を務め、その間、全国学校図書館協議会に関わったり、栃木県立図書館の運営委員を務めたり、児童・生徒の読書教育に貢献してきました。また、自らも創作活動を続け、日本児童文学者協会から認められ18冊の作品が入選し、児童図書の出版では有名な偕成社・講談社・ポプラ社などで出版されました。長年、全国学校図書館協議会主催の読書感想文コンクールの審査委員や、よい絵本の選定委員などを務め、現場では学習指導主任や図書館指導主任として教師の資質向上にも貢献してきました。読書指導に関する研究論文では全国で2回受賞し、全国学校図書館協議会からは、皇太子ご夫妻ご臨席の下、功労賞を受賞しました。宇都宮市教育委員会からは教育論文の最優秀賞を頂いています。    mitsuko smaller
退職後は第1回宇都宮市女性海外セミナーの団長に選ばれ、1992年フランスやオーストリアを15名の団員と共に訪れています。現在は趣味の写真や旅行を楽しみながら、『あある先生のジャパンブック』の写真の提供者となり、またアドバイザーとして影ながら応援してくれています。

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